- 福田幸寛
ブックレビュー AX 伊坂幸太郎
幸せについて、考える。
恐妻家に怯える殺し屋、兜の物語
ありえない設定で繰り広げられる伊坂ワールド
兜の息子、克己から見たら、妻に怯える不幸な結婚生活
しかし、兜から見たら
「仕事」と日常をつなげてくれる妻
息子と自分をつなげてくれた妻
「次も、おふくろと結婚するわけ?」
うなづく必要すら感じなかった。「そしてまたお前が生まれてくる。そうじゃなかったら、つらいな」
「はあ。それでまた、おふくろに怯えた人生を送るってこと?」
私は自然と笑い声を立てている。「まあ、お前からは、俺はそう見えているんだろうな」
「そうとしか見えない」
「ただ」理解されないと分かっていても、言った。「いいことのほうがたくさんあった」
妻に、ゴキゲンでいてもらうために最大限の配慮をすることは
息子から見たら、妻に怯えた人生だったのかもしれない
兜にとっては、そんな日常が「いいこと」だった
「君のお父さんは、君の父親です。ただ、それだけです。」
誰かに認められるために、父親をやっているわけではない。
父親であること、ただそれだけで、もう十分に与えてもらっている。
妻への気遣いにも、
息子に注ぐ愛情にも、
対価なんていらないのだ。
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